誰かがこの町で 佐野広美著
登場人物がそれぞれに大小の古傷を持っていて、良くない事と知りながら、同調圧力や保身のために加担もしくは流されてしまった過去と、それによって科せられた代償が描かれています。
「良くない事」の程度は犯罪から見て見ぬふりまで。
「加担」の程度は積極的にから敢えて関わらないまで。
積極的に犯罪に加担する人たちが極端な行動に出てしまうお話を軸に、加担の程度がグラデーションとなっていて、読み手によって善悪の切り分けどころが変わってきそうです。
ふと自身を顧みたりしてしまう。
大きな声じゃ言えませんが、アタシにだって墓場まで持っていく話の一つや二つありますよ。でもさ、良くないことと認識しつつもやってしまった過去のない人なんているのかしらん?(誰も責めてないのに自己弁護)
さて、その極端な人々が、有り得な過ぎて突っ込みどころ満載の事件を起こすのですが、現実でもスッカリ異次元に入り込んで、価値観が明後日方向に行っちゃってる人々の事件って結構ありますしね。
主人公の真崎は、ブレーキのかけどころが大事と言います。
ま、そうね。あかんと思ったらブレーキ大事よね。
でも、スッとフェードアウトとか、放置からの忘却とか、現実は色々バリエーションあるし、必ずしも代償くらうわけでもない。
そーゆーパターンの方が今時な気がします。
なので、人物造形含め若干古めかしい印象の本でした。