長い長い殺人 / 宮部みゆき
知らずに手に取ったけど、これ、宮部みゆきがデビューした年に、当初は試験的に書かれた作品なんですね。
ある殺人事件について、様々な立場の登場人物が持ち歩く財布視点で語られるという仕掛けで、刑事、少年、探偵、目撃者、死者、旧友、証人、部下、犯人の財布が登場します。
擬人化された財布には知力、聴力、視力があって、財布の見た目なりの性格もある。ただしカバンやポケットに入れられると何も見えなくなるし、遠くの声や音はよく聞こえません。つまり、財布が知ることのできる情報には制約があるんです。
なるほどね。
いい具合に情報隠して、徐々に真相を詳らかにしていくってことね。
ただ、正直その装置を巧く活用してるかと言われれば、う~んって感じ。それぞれの財布語りが有機的に繋がってるかというと、これもまた、この財布必要だった?ってのもあって消化不良気味。
そして、犯人が明かされたときの脱力感。
それじゃ「夢だったのかぁ」で何でもアリになっちゃうパターンと大差なくね?ってなりました。
近頃のミステリーは、伏線も回収もどんでん返しも趣向を凝らしたものが多くて(そこのみに心血注いだよね?ってのもあるけど)それに慣れちゃったのか、ひねりが無さ過ぎて肩透かしくらったような感じがしました。
ただ、ミステリーとしてはイマイチだったけど、それぞれの財布と持ち主の物語が短編集のようで、読み物としては面白かったです。
それもそのはず。最初は刑事の財布のみの短編だっだのに、評判良くて続けちゃったらしいので。
それで思い出したけど、湊かなえさんの「告白」もホントは最初の章のみの短編だったんじゃないかと感じたの、私だけ?