光媒の花
緩やかに繋がる6編の物語。
前半3編は重く救いのない内容が続きます。 特に序盤の2編に静かな衝撃を受けました。
静謐で美しい情景の中で起こる、ある事件とその真相。 幼い兄妹が背負った十字架と、顔の違う真実。 傷つく無辜の悲しさが、流麗な文章で綴られることで際立ってしまい、暗澹たる思いで暫しページがめくれなくなりました。
それが後半3編で様相がガラリと変わります。沈んだ胸に薄日が差していくような印象をうけました。
6編はそれぞれが独立した短編小説ではありますが、ある物語の登場人物が意図せず他の話の登場人物を直接的間接的に救っています。読みながら私も救われました。ああ、良かったな。
風や虫を媒介に受粉する風媒花と虫媒花。
人は希望の光を媒体に花を咲かすものなんだな。